大阪大学サイバーメディアセンター先端ネットワーク環境研究部門
(大阪大学大学院情報科学研究科ユビキタスネットワーク講座)
2014年度研究成果報告

本Webページは大阪大学サイバーメディアセンター先端ネットワーク環境研究部門(大阪大学大学院情報科学研究科ユビキタスネットワーク講座、松岡研究室)の2014年度の研究成果をまとめた報告書です。ご清覧いただき、忌憚のない意見を下されば幸いです。

目次

  1. メンバー
    1. スタッフ
    2. 共同研究者
    3. 学生
  2. 研究業績
    1. データセンタの省電力化に関する研究
      1. データセンタにおける空調機の消費電力を削減するためのサーバへのタスク配置手法
      2. データセンタの電力削減のための機械学習法を利用した温度分布予測
      3. データセンタの温度分布予測のためのネットワークモデルの提案
      4. データセンタの省電力化に向けたガウス過程動的モデルによる温度分布予測
      5. 数値流体力学シミュレーションによるデータセンタ内の温度予測
      6. データセンタのエネルギー制御のためのサーバ消費電力モデルの構築
    2. エネルギー管理システム (Energy Management System) に関する研究
      1. WebSocket技術を用いたクラウド型エネルギー管理システムの性能評価
      2. CEMSにおける多数端末の同時接続に対するMQTTプロトコルの拡張性の実験評価
      3. データセンター機器制御のためのIEEE 1888へのWebSocketプロトコルの適用
    3. トランスポート層アーキテクチャに関する研究
      1. オーバレイルーティングによって増加する ISP 間トランジットコストの削減に関する研究
      2. オーバレイネットワークにおけるネットワーク性能計測手法に関する研究
      3. ネットワークパスの複数区間の利用可能帯域の同時計測に関する研究
      4. マルチテナント型データセンタにおける仮想ネットワーク配置に関する研究
      5. Webトラヒック制御に関する研究
      6. 化学反応式を用いた空間協調モデルに基づくサービス空間構築手法に関する研究
    4. 無線・モバイルネットワークに関する研究
      1. TCPの動作を考慮した無線LANの消費電力低減に関する研究
      2. M2M通信収容のためのモバイルコアネットワークアーキテクチャに関する研究
      3. スマートフォンアプリケーションのパケット分類手法に関する研究
      4. TDMA型マルチホップ無線ネットワークにおけるトポロジがネットワーク性能に与える影響の研究
  3. 発表論文一覧
    1. 学術論文誌
    2. 解説論文・記事
    3. 国際会議会議録
    4. 口頭発表
    5. 博士論文・修士論文・特別研究報告
      1. 博士論文
      2. 修士論文
      3. 特別研究報告

1. メンバー

1.1. スタッフ

松岡 茂登
松岡 茂登
教授
長谷川 剛
長谷川 剛
准教授
樽谷 優弥
樽谷 優弥
助教
大西 麻理
大西 麻理
秘書
(2014.8退職)
藤井 匡江
藤井 匡江
秘書

1.2. 共同研究者

村田 正幸
村田 正幸
大阪大学
教授
萩田 紀博
萩田 紀博
ATR IRC
所長
上羽 正純
上羽 正純
室蘭工業大学
教授
浮田 宗伯
浮田 宗伯
奈良先端科大
准教授
多田 知正
多田 知正
京都教育大学
准教授
中村 泰
中村 泰
大阪大学
特任准教授
谷口 義明
谷口 義明
近畿大学
講師
松田 和浩
松田 和浩
大阪大学
招へい研究員
江崎 浩
江崎 浩
東京大学
教授
落合 秀也
落合 秀也
東京大学
講師
村田 修一郎
村田 修一郎
大阪大学
招へい研究員

1.3. 学生

通阪 航
通阪 航
博士後期課程2年
小山 甲射
小山 甲射
博士前期課程2年
桜井 駿
桜井 駿
博士前期課程2年
橋本 和幸
橋本 和幸
博士前期課程2年
出口 孝明
出口 孝明
博士前期課程1年
北田 和将
北田 和将
博士前期課程1年
ENKHEE TEMUYLEN
ENKHEE TEMUYLEN
博士前期課程1年
北川 貴大
北川 貴大
学部4年
田代 晋也
田代 晋也
学部4年
田中 博貴
田中 博貴
学部4年
寺山 恭平
寺山 恭平
学部4年

2. 研究業績

2.1. データセンタの省電力化に関する研究

近年、データセンタの消費電力削減が大きな課題となっている。本研究テーマでは、データセンタの省エネルギー技術と、広義の再生可能エネルギーである廃熱をオフィス等へ高効率に利活用する技術を両立させ、抜本的な電力削減を実現することを考えている。具体的には、データセンタの電力消費の3大要素(ICT機器、空調機器、電源)それぞれの省エネ技術について個別に取り組むと共に、高効率に回収した廃熱のオフィス等への利活用技術、およびそれらの統合連携制御を検討している。

[関連発表]

  1. 松岡茂登, ``エネルギーセントリック データセンター ,'' OHM, pp.43-45, Apr. 2014.
  2. 松岡茂登, ``ユビキタス社会を支えるデータセンタの省エネ化 エネルギーセントリックデータセンター,'' 電気評論, June 2014.

2.1.1. データセンタにおける空調機の消費電力を削減するためのサーバへのタスク配置手法

データセンタにおける空調機の消費電力を削減するためのサーバへのタスク配置手法

近年、仮想専用サーバやウェブアプリケーション、オンラインストレージなどネットワークを介してデータセンタのサーバ資源を利用するサービスが普及し、データセンタへの需要が高まっている。それに伴い、データセンタの数および電力消費は年々増大しており大きな問題となっている。そのため、データセンタの省電力化に関する研究が注目を集めている。データセンタでは、サーバ等のICT 機器や空調機が消費電力の大半を占めている。既存の研究においては、データセンタを構成する個別の機器の電力効率を向上させるため多くの取り組みが行われている。それに対し我々の研究グループでは、データセンタを構成する個別機器の制御ではなく、データセンタ内の様々な機器の制御を連携して行うことにより、データセンタの電力効率をさらに向上させる取り組みを行っている。本研究では特に空調機とサーバの連携制御に着目する。

ラックに設置されたサーバは、タスクを実行することによって熱を発生する。この熱が溜まってサーバ内の温度が上昇しすぎると、サーバの故障の原因となる。この熱を冷却ために空調機が用いられるが、サーバの空調機からの距離やラック内での高さによってサーバを通過する風量が異なる。このため、データセンタ内のそれぞれのサーバが同量のタスクを実行していても、個々のサーバの場所に応じて温度差が生じる。空調機の設定温度は、サーバの故障を防ぐために最も温度の高いサーバの温度が基準以下となるように決定される。従って、サーバ温度にばらつきがある場合には温度の低いサーバは基準よりさらに低い温度となっており、空調機はこのサーバに対して必要以上の冷却を行っていることになる。そこで、サーバのタスク量をその位置に応じて制御することによって、データセンタ内の温度分布を平準化できれば、サーバの最高温度が低下し、空調機の設定温度を上昇させることにより、空調機の消費電力を削減できると考えられる。

我々は、サーバの排気温度の分布を平準化するためのタスク配置手法として、排気温度が高いサーバのタスクを排気温度が低いサーバに移動させる手法を提案した。しかし、データセンタにはサーバが多数存在するため、提案していた単純な発見的手法では良いタスク配置を発見できない、あるいは発見に長い時間がかかる場合がある。

そこで本研究では、汎用性の高い発見的手法である遺伝アルゴリズムを用いて、サーバの排気温度の分布を平準化するためのタスク配置手法を提案する。提案手法では、サーバへのタスク配置に関する情報を遺伝子と見なし、サーバ排気温度の分散が小さいほど遺伝子の適応度が高いとして、遺伝アルゴリズムを適用することによって、サーバ排気温度の分散が小さくなるタスク配置を得る。提案手法の性能評価を数値流体力学シミュレータを用いて行い、ランダムにタスクを配置した場合と比較してサーバの排気温度の偏差を減少させられることを明らかにした。

[関連資料]

  1. データセンタにおける空調機の消費電力を削減するためのサーバへのタスク配置手法 データセンタにおける空調機の消費電力を削減するためのサーバへのタスク配置手法 (5,054 KB)

[関連発表]

  1. Takaaki Deguchi, Yoshiaki Taniguchi, Go Hasegawa, Yutaka Nakamura, Norimichi Ukita, Kazuhiro Matsuda and Morito Matsuoka, ``Impact of workload assignment on power consumption in software-defined data center infrastructure,'' in Proceedings of the 3rd IEEE International Conference on Cloud Networking (IEEE CloudNet 2014), Oct. 2014. [paper]
  2. 出口孝明, 樽谷優弥, 長谷川剛, 中村泰, 田村卓三, 松田和浩, 松岡茂登, ``データセンタにおける空調機の消費電力を削減するための遺伝アルゴリズムに基づくタスク配置手法の性能評価,'' 電子情報通信学会技術研究報告(NS2014-203), vol.114, no.477, pp.149-153, Mar. 2015. [paper]

2.1.2. データセンタの電力削減のための機械学習法を利用した温度分布予測

データセンタの電力削減のための機械学習法を利用した温度分布予測

ソーシャルネットワーキングサービスや動画共有サービスのようなクラウド環境に基づくネットワークサービスの普及により、データセンタの需要が増加している。また、ICT 機器の処理能力の向上に伴う発熱量の増大と、それを冷却するための空調機の消費電力により、データセンタにおける電力コストは年々増加している。このことから、データセンタの省電力化に関する研究が注目を集めている。例えば、サーバ、ネットワークスイッチ、空調機などのデータセンタを構成する個別の機器やシステムに対して、電力効率を向上させる取り組みが多く行われている。また、サーバへのタスク配置を工夫し、使用しないサーバをスリープあるいはシャットダウンすることにより省電力化を行う手法が提案されている。しかし、データセンタ全体のエネルギー効率を改善するためには、各機器間の協調制御が必要であり、特に空調機をデータセンタ内の温度分布に基づいて制御することが効果的であると考えられる。

空調機による冷却設定の変更がデータセンタ全体の温度分布を変化させるまでには、約10 分の時間を必要とする。そのため、温度センサを用いて温度分布を計測し、それに基づいて空調機を制御する場合、ICT 機器の動作温度を超えないように、余裕を持たせた空調機の稼働が必要となり、電力効率の低下につながる。それに対し、温度分布を予測することができれば、予測結果を利用して空調機を制御することが可能になるため、電力削減が可能になると考えられる。しかしながら、データセンタ内の温度分布は、データセンタ構成、サーバ構成、機器の仕様、サーバで実行されるタスクの特性等の様々な要素に複雑な影響を受けるため、その予測は難しい。

本研究では、データセンタの電力削減を目的とした、機械学習法を利用したデータセンタ内の温度分布の予測手法を提案する。機械学習法は、観測データが豊富に得られ、かつ多くのパラメータが複雑に影響しあうデータセンタ環境に適していると考えられる。提案手法においては、データセンタの空調機設定やサーバの消費電力などの稼働データを基に、データセンタ内の温度分布に影響を与えると考えられる変数を特定し、線形回帰法あるいはランダムフォレスト法による温度分布の回帰モデルの学習を行う。その際、主成分分析により抽出した少数の特徴量を用いることで、学習を高速化及び精度を向上する。その後、構築した回帰モデルを用いて、各機器の設定値からデータセンタ内の温度分布を予測する。研究グループが運用している実験用データセンタの稼働データを用いて提案手法を評価した結果、空調機の設定値及びサーバのタスク配置を変更してから10 分後のデータセンタ内の温度分布を0.095℃ の確度、及び0.107℃ の精度で予測できることを明らかにした。

[関連資料]

  1. データセンタの電力削減のための機械学習法を利用した温度分布予測 データセンタの電力削減のための機械学習法を利用した温度分布予測 (428 KB)

[関連発表]

  1. Kazuyuki Hashimoto, ``Temperature prediction for energy optimization in data centers by machine learning approaches,'' Master's Thesis, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, Feb. 2015.
  2. 橋本和幸, 樽谷優弥, 長谷川剛, 松田和浩, 田村卓三, 中村泰, 松岡茂登, ``データセンタの電力削減のための機械学習法を利用した温度分布予測,'' 電子情報通信学会技術研究報告(NS2014-191), vol.114, no.477, pp.87-92, Mar. 2015. [paper]

2.1.2. データセンタの温度分布予測のためのネットワークモデルの提案

データセンタの温度分布予測のためのネットワークモデルの提案

近年、スマートフォンの普及やSNS サービス、オンラインストレージのようなインターネットサービスの増加により、サーバサイドコンピューティングやクラウドコンピューティングに対する需要が増加している。それに伴い、そのようなサービスを行うデータセンタの数及び規模が年々拡大しており、消費電力の増大が問題となっている。この問題に対し、データセンタを構成する個々の機器の電力効率を向上させる取り組みが多く行われているが、さらにデータセンタの電力効率を高めるためには、機器間の連携制御が求められる。

空調機の消費電力がデータセンタ全体の消費電力に占める割合が大きいこと、かつ、空調機の制御がデータセンタ全体の温度分布に大きな影響を与えることから、空調機の適切な制御は不可欠である。空調機の吸気温度や風量の設定変更が、データセンタ内の温度分布に十分な影響を与えるまでには、数分から数十分の時間が必要であるため、空調機の適切な制御を行うためには、データセンタ内の温度分布を実時間で予測することが求められる。

データセンタの温度分布予測に使用される従来のモデルとして、Computational Fluid Dynamics (CFD) をに基づく解析モデルやPotential Flow Model (PFM) などが挙げられるが、温度予測にかかる計算時間が大きいため、実時間制御には利用することが出来ない。そこで本研究では、計算を単純化することによって、実時間でデータセンタ内の温度分布を予測することができるネットワークモデルを提案する。提案するモデルでは、データセンタ内に存在する気流や浮力による空気の循環に伴う熱の移動や、ラックに設置されたサーバの位置関係などの様々な物理的な関係をネットワークとしてモデル化する。さらに、データセンタの過去の稼働データを用いて、モデルが持つパラメータの値を機械学習によって導出し、データセンタ内の温度分布を予測する。実稼働している約400 台のサーバから構成されるデータセンタの稼働データを用いて、提案モデルによる温度分布の予測を行った結果、データセンタ内の60 箇所の10 分後の温度予測に必要な時間は3.6 ms 程度であり、CFD やPFM と比較して非常に小さいことがわかった。また、今回提案モデルの評価に用いたデータに関する予測結果の二乗平均平方根誤差は、最大でも0.74 ℃に抑えられることを明らかにした。

[関連資料]

  1. データセンタの温度分布予測のためのネットワークモデルの提案 データセンタの温度分布予測のためのネットワークモデルの提案 (3,820 KB)

[関連発表]

  1. 田代晋也, ``データセンタの温度分布予測のためのネットワークモデルの提案,'' 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, Feb. 2015.
  2. 田代晋也, 樽谷優弥, 長谷川剛, 中村泰, 松田和浩, 松岡茂登, ``データセンタの温度分布予測のためのネットワークモデル,'' 電子情報通信学会技術研究報告(NS2014-190), vol.114, no.477, pp.81-86, Mar. 2015. [paper]

2.1.3. データセンタの省電力化に向けたガウス過程動的モデルによる温度分布予測

データセンタの省電力化に向けたガウス過程動的モデルによる温度分布予測

近年、ソーシャルネットワークサービスやオンラインストレージの普及に伴い、クラウドコンピューティングに対する需要が増大している。そのようなオンラインサービスを提供する基盤であるデータセンタの規模は拡大しており、その消費電力の増大が問題となっている。そのため、データセンタの消費電力の削減は大きな課題であり、特に電力効率を考慮し、データセンタの処理能力を低下させることなく、消費電力を削減することが重要視されている。

これに対して、データセンタを構成する個々の要素を対象とした省電力化技術の取り組みが行われている。しかしながら、個々の機器毎の省電力化技術を適用させても、データセンタ全体の消費電力の観点では、期待する効果が得られない場合がある。そのため、データセンタ全体の消費電力を削減するためには、他の機器への影響を考慮しつつ、データセンタ内の機器を連携制御する必要がある。特にデータセンタ内の温度分布を考慮し、空調機と他の機器を協調して制御することが効果的であると考えられる。

本研究では、データセンタ内の過去の観測データを用いて機械学習を適用することで、データセンタ内の温度分布を予測する手法を提案する。提案手法では、対象となる観測データの非線形性やダイナミクスの特性を反映するために、学習モデルには、ガウス過程を動的システムに応用した手法であるガウス過程動的モデル(GPDM)を用いた。本研究では、我々の研究グループが運用しているデータセンタより得られた観測データを用いて、提案手法によるデータセンタ内の温度分布の予測の性能評価を行う。性能評価の結果、テストデータとして用いた区間において、確度±0.932 度、精度1.51 度で予測できることを示した。

[関連発表]

  1. 菅沼孝二, 樽谷優弥, 長谷川剛, 中村泰, 浮田宗伯, 松田和浩, 松岡茂登, ``データセンタの省電力化に向けたガウス過程動的モデルによる温度分布予測,'' 電子情報通信学会技術研究報告(NS2014-204), vol.114, no.477, pp.155-160, Mar. 2015. [paper]

2.1.4. 数値流体力学シミュレーションによるデータセンタ内の温度予測

数値流体力学シミュレーションによるデータセンタ内の温度予測

オンラインストレージサービスやWeb メール等のクラウドサービスの普及に伴い、データセンタの数が年々増大している。データセンタにはICT 機器が集約されており、それらは稼働と共に熱を発し、データセンタ内の温度を上昇させるため、空調機による冷却が行われる。空調機の給気温度は、データセンタ内の最高温度がICT 機器が故障しないための閾値以下になるように設定される。一方、給気温度の低下にともない空調機の消費電力は増加するため、可能な限り高い温度設定で運用するのが望ましい。従って、データセンタにおいては空調機設定を慎重に行う必要があるが、そのためには、データセンタの設計段階や運用時にデータセンタの温度予測が必要となる。しかし、データセンタ内の温度は、サーバラックや空調機の配置及び設定、各サーバの発熱量等の多数の要因に影響されるため、その予測は容易ではない。

データセンタ内の温度を予測する方法の一つとして、数値流体力学(CFD: Computational Fluid Dynamics) シミュレーションがある。CFD シミュレーションを用いたデータセンタの温度予測においては、主な熱源の一つであるサーバの排気温度を正確に再現することが重要である。サーバの排気温度は主に、サーバの吸気温度、サーバの発熱量、サーバ内通過風量に依存するため、これらの値を実際の稼働データから取得し、シミュレーションパラメータとして用いることが有効である。しかし、サーバの吸気温度と発熱量はセンサを用いて計測することが可能であるが、サーバ内通過風量は計測することが出来ない。サーバ内通過風量は主にサーバの吸気風量に依存する。サーバの吸気風量は空調機の設定や、空調機とサーバの位置関係などにより、時間的かつ空間的に変動する。しかし、従来のサーバモデルにおいてはサーバ内通過風量は固定的に設定されるため、吸気風量の時間的な変動に応じたサーバ内通過風量の変化を再現できない。

本研究では、CFD シミュレーションによるデータセンタの温度予測に用いる、サーバの吸気風量に応じたサーバ内通過風量の変化を再現できるサーバモデルを提案する。提案するモデルにおいては従来のモデルと同様に、サーバを構成する各機器が集約された板としてサーバ本体をモデル化する。従来のモデルにおいては、サーバ内通過風量を決定するためにファンに相当する部品を用いているが、提案するモデルにおいては、サーバの吸気風を部分的に透過させるために、フィルタに相当する部品(フィルタパネルと呼ぶ) を用いる。これにより、提案するモデルにおけるサーバ内通過風量は、サーバの吸気風量とフィルタパネルが透過させる風量の割合によって決定される。フィルタパネルが透過させる風量の割合はフィルタパネルが持つパラメータである開口率によって決定される。本研究においては、実際のサーバを用いた風量測定実験を行い、実験結果により測定した値とCFD シミュレーションによって提案するモデルの開口率を決定する。提案モデルの有効性は、風速測定実験の結果とCFD シミュレーションの結果を比較することによって、及び、提案するサーバモデルを用いてデータセンタ全体の温度予測をCFD シミュレーションによって行った結果と、我々の研究グループで運用しているけいはんなデータセンタにおける稼働データを比較することによって検証する。

[関連資料]

  1. 数値流体力学シミュレーションによるデータセンタ内の温度予測 数値流体力学シミュレーションによるデータセンタ内の温度予測 (2,226 KB)

[関連発表]

  1. 北田和将, 樽谷優弥, 長谷川剛, 松田和浩, 松岡茂登, ``数値流体力学シミュレーションによるデータセンタ内の温度予測のためのサーバモデルの作成,'' 電子情報通信学会技術研究報告(NS2014-243), vol.114, no.477, pp.385-390, Mar. 2015. [paper]

2.1.5. データセンタのエネルギー制御のためのサーバ消費電力モデルの構築

データセンタのエネルギー制御のためのサーバ消費電力モデルの構築

近年、クラウドコンピューティングやビッグデータ利活用などの、ネットワークを介してコンピューティング資源を利用するサービスの需要が増加している。このようなサービスを提供する基盤として、多数のサーバを収容するデータセンタが構築されており、その重要性は増している。データセンタでは、機器そのものや機器の冷却のための消費電力の増加が問題視されており、省電力化に関する研究に注目が集まっている。

データセンタ全体の消費電力のうち、サーバの消費電力が最大の割合を占めている。そのため、データセンタ全体の省電力化のためには、サーバの消費電力を正確に推測することが求められる。サーバの消費電力に影響を与える要因にはCPU 使用率、ファンの回転数、メモリやハードディスクに対するI/O 処理などが挙げられる。また、近年導入されているサーバの多くは、吸気温度やCPU 温度などに応じて動的にサーバ内部のファンの制御を行うため、吸気温度やCPU 温度もサーバの消費電力に影響を与えると考えられる。さらに、これらの要因の中にはお互いに依存関係を持つものも存在するため、サーバの消費電力の推測は容易ではない。既存研究においては、CPU 使用率と吸気温度の単純な線形和の消費電力モデルが用いられているため、サーバの消費電力を正確に推測できない。

本研究では、上述したような様々な要因を考慮したサーバの消費電力モデルを構築する。提案するサーバの消費電力モデルは、サーバのCPU 使用率、吸気温度、使用しているメモリの数をパラメータとし、それらの和で表現される。これらのパラメータがサーバの消費電力に与える影響の大きさを明らかにするために、単体のサーバを用いて、様々な環境における消費電力を計測する。得られた実験結果を基に、サーバの消費電力モデルを構築する。次に、実験用のサーバで計測したデータを用いて重回帰分析を行い、モデルが持つ係数を決定する。実験結果とモデルによる推測結果を比較した結果、サーバのCPU 使用率と吸気温度のみに基づく単純な消費電力モデルに比べて、提案モデルに基づく推測結果の実験データに対する平均二乗誤差が57.14% 向上した。また、実際に運用されているデータセンタの稼働データを用いて、同様の性能評価を行った結果、データセンタで運用されているサーバに対しても、サーバのCPU 使用率と吸気温度のみに基づく単純な消費電力モデルに比べて、推測結果の実験データに対する平均二乗誤差が10.02%向上することを明らかにした。

[関連資料]

  1. データセンタのエネルギー制御のためのサーバ消費電力モデルの構築 データセンタのエネルギー制御のためのサーバ消費電力モデルの構築 (1,662KB)

[関連発表]

  1. 寺山恭平, ``データセンタのエネルギー制御のためのサーバ消費電力モデルの構築,'' 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, Feb. 2015.

2.2. エネルギー管理システム (Energy Management System) に関する研究

2.2.1. WebSocket技術を用いたクラウド型エネルギー管理システムの性能評価

WebSocket技術を用いたクラウド型エネルギー管理システムの性能評価

家庭、ビル、 工場などのエネルギー効率を最適化するための技術として、エネルギー管理システム(Energy ManagementSystem (EMS)) が注目を集めている。EMS においては、ネットワークに接続するセンサや端末から得た情報を用いて、機器の消費電力を監視及び制御することで、エネルギー効率の最適化を行う。日本においては、工場などの産業用のエネルギー消費は減少しているが、家庭用のエネルギー消費は継続的に増加しており、問題視されている。その要因として、家電機器の普及、大型化、多様化が挙げられる。

そういった、一般家庭の家電機器を管理対象とする、一般家庭を対象にしたエネルギー管理システムであるHome EnergyManagement System (HEMS) が省エネのための重要な要素技術として注目されている。HEMS では、家電機器の使用電力を可視化し、機器制御を可能とするこによって、消費電力の低減を促進することが考えられており、既に導入例が存在する。HEMS を実現するネットワークアーキテクチャの1 つとして、家電機器にWeb プロトコル等によってHEMS サーバと直接通信を行う機能を持たせることによって、HAN 内に情報収集装置を不要とするクラウド型 HEMS がある。このアーキテクチャは、家庭内にHEMS サーバやゲートウェイを導入する他のアーキテクチャに比べて、導入コストを大きく削減できることが考えられる。また、多数の家庭の機器管理を少数のHEMS サーバで行うことができるため、システム管理コストの低減も期待される。しかし、クラウド型HEMS の導入が進み、多くの家電機器がHEMS サーバに接続されることにより、HEMS サーバに負荷が集中し、システム性能が悪化することが考えられる。家電機器のWeb of Things (WoT) 化は急激に進んでおり、2020 年には500 億台の端末がインターネットに接続するという調査がある。このような状況を鑑みると、HEMS をクラウド型ASPサービスとして提供する際のサーバ負荷を軽減することは重要である。

我々の研究グループでは、この問題に対し、通信プロトコルとして WebSocket を用いてクラウド型HEMS サービスを実現することを検討してきた。通信プロトコルとして、WoT 端末において通常用いられる Hypertext Transfer Protocol (HTTP) ではなく、WebSocket を用いることで、オーバーヘッドの削減や双方向性の向上が期待できる。我々の研究グループでは、数学的解析手法や小規模な実験により、WebSocket を用いたクラウド型HEMS システムの性能評価を行い、ネットワークトラヒックやサーバ負荷の観点で, 既存手法と比べて有用であることを明らかにした。しかし、大規模なクラウド型HEMS の実現のために必要となる、多数の端末を収容する状況を想定した性能評価は行われていない。

そこで本研究では、WebSocket を用いたクラウド型HEMSを対象に、多数の端末をHEMS サーバに収容する際のサーバ性能や通信性能を実験により評価することで、システム全体のスケーラビリティの検証を行う。具体的には、HEMS において収容対象となるスマートメータ、家電機器などの通信を模擬するエミュレーションプログラムを用いて、数十万台の機器が1 台のHEMS サーバに接続する状況を想定した実験を行い、HEMSサーバのCPU 使用率やメモリ使用量及び機器とHEMS サーバ間の通信に発生する遅延時間などを評価する。また、HEMSサーバのハードウェア性能がHEMS システム全体の性能に与える影響についても検証する。実験結果より、HEMS サーバに接続される端末数の増加に対し、CPU 使用率が複雑な傾向を持って増加すること、及び、HEMS サーバのメモリ使用量と1 秒間に処理するメッセージ数が線形的に増加することがわかった。また、CPU 物理コア数の増加に対し、HEMS サーバの収容可能端末数の増加割合は僅かに劣化することがわかった。

[関連資料]

  1. WebSocket技術を用いたクラウド型エネルギー管理システムの性能評価 WebSocket技術を用いたクラウド型エネルギー管理システムの性能評価 (1,306 KB)

[関連発表

  1. エムヘーテムーレン, 樽谷優弥, 長谷川剛, 松田和浩, 村田修一郎, 松岡茂登, ``WebSocketを用いたクラウド型HEMSのスケーラビリティの実験評価,'' 電子情報通信学会技術研究報告(NS2014-206), vol.114, no.477, pp.167-172, Mar. 2015. [paper]

2.2.2. CEMSにおける多数端末の同時接続に対するMQTTプロトコルの拡張性の実験評価

CEMSにおける多数端末の同時接続に対するMQTTプロトコルの拡張性の実験評価

家庭やビルなどのエネルギー消費を制御する技術として、エネルギー管理システム(EMS:Energy Management System) が注目を集めている。家庭向けのEMS であるHEMS (HomeEMS)、ビル向けのEMS であるBEMS (Building EMS) などのEMS や、さらにスマートグリッドなどを含んだ、地域全体を対象とした大規模なEMS をCEMS (Community EMS)と呼ぶ。

EMS においては、ネットワーク接続された多数のセンサやアクチュエータ等の端末とEMSサーバの間において、端末情報や制御信号などの、小さなデータが定期的あるいは間欠的に送受信される。従来のEMS における通信は、主にHyperText Transfer Protocol (HTTP)を通信プロトコルとして用いる事が考えられてきた。しかし、HTTP は、EMS において送受信されるメッセージに対して大きなメッセージヘッダを持つため、必ずしもEMS には適していないと考えられる。特にCEMS のように、数万から数百億台の端末が接続されることが想定される大規模環境においては、通信の際のオーバヘッドが顕在化すると考えられる。本研究では、機器間通信のためのプロトコルとして標準化が進められているMessage Queu-ing Telemetry Transport (MQTT) に着目する。MQTT はその基本的な機能検証や少数の端末を用いた実験評価は行われているが、CEMS 環境に求められるような、多数の端末が同時にブローカに接続するような環境を想定した動作については、定量的な評価は行われていない。

本研究では、MQTT を通信プロトコルとして用いたCEMS を想定し、MQTT プロトコルの端末接続数に対する拡張性についての実験評価を行った。具体的には、エミュレーションプログラムを用いて、センサやアクチュエータを模擬した600,000 台の端末をブローカに接続する実験環境を構築し、多数の端末が同時接続された環境における、ブローカを担うサーバのCPU 使用率やメモリ使用率などのサーバ負荷、及びMQTT の接続要求メッセージに対するブローカの応答遅延時間などの評価を行った。その結果、端末がブローカに接続していることでCPU 資源を消費すること、及び、講読登録の処理を行うことは、CPU 資源の定常的な消費には繋がらないことが明らかとなった。また、ブローカのメモリ使用量は、PING メッセージの送受信には影響を受けず、同時接続数に応じてほぼ線形に増加し、購読登録を行うことでメモリ使用量が増加することが明らかとなった。さらに、端末同時接続数の増加に応じて、メッセージ処理時間が増大することも明らかとなった。

[関連資料]

  1. CEMSにおける多数端末の同時接続に対するMQTTプロトコルの拡張性の実験評価 CEMSにおける多数端末の同時接続に対するMQTTプロトコルの拡張性の実験評価 (618 KB)

[関連発表]

  1. 北川貴大, ``CEMSにおける多数端末の同時接続に対するMQTTプロトコルの拡張性の実験評価,'' 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, Feb. 2015.
  2. 北川貴大, 樽谷優弥, 長谷川剛, 松田和浩, 村田修一郎, 松岡茂登, ``CEMS における多数端末の同時接続に対する MQTT プロトコルの拡張性の実験評価,'' 電子情報通信学会技術研究報告(NS2014-218), vol.114, no.477, pp.239-244, Mar. 2015. [paper]

2.2.3. データセンター機器制御のためのIEEE 1888へのWebSocketプロトコルの適用

データセンター機器制御のためのIEEE 1888へのWebSocketプロトコルの適用

オンラインアプリケーションやクラウドサービスの急速な普及に伴い、それらのサービス基盤であるデータセンターに対する需要が増加している。その結果、データセンターで消費される電力の増大が問題視されており、データセンターの省電力化に関する研究が注目されている。

データセンターのような環境において、機器の稼働状況や消費電力の監視、制御を行うための技術として、エネルギー管理システム(Energy Management System (EMS)) に関する取り組みが注目を集めている。特にデータセンターに対するEMS はData center EMS (DEMS) と呼ばれている。DEMS においては、データセンタ内の様々なICT 機器や空調機の稼働情報や温度に関する情報を収集し、サーバに対するタスクの配置や、タスク配置と連携させた空調制御や電力供給制御を行うことにより、データセンター全体の省電力化を図ることが目的とされている。

エネルギー管理システムにおいて用いられるプロトコルの1 つにIEEE 1888 が挙げられる。現在、IEEE 1888 はSOAP Web サービスとして実装されており、その通信にはHTTPが用いられる。しかし、エネルギー管理システムにおいてはセンサデータや機器制御信号などの小さなサイズのデータが定期的、あるいは間欠的に送受信されることが多いため、そのような通信のためにHTTP を用いると、HTTP のプロトコル仕様に起因する、メッセージヘッダのオーバヘッドや双方向通信の柔軟性に関する問題が顕在化する。我々の研究グループでは、この問題に対し、通信プロトコルとしてHTTP ではなくWebSocket を用いることを提案している。WebSocket はHTTP と比較して、メッセージヘッダが小さいこと、柔軟な双方向通信が可能であることなどの特徴を持つ。そのため、エネルギー管理システムのための通信プロトコルとして適していると考えられる。しかし、多数の機器を監視及び制御の対象とし、同時接続セッション数が増大するエネルギー管理システムを想定したIEEE 1888のスケーラビリティの検証は進んでいない。特に、WebSocket を通信プロトコルとして用いる場合の性能評価はほとんど行われていない。

そこで本報告では、DEMS への適用を想定し、通信プロトコルとしてWebSocket を用いたIEEE 1888 対象とし、その基本的な特性を明らかにするための実験評価を行った。具体的には、SOAP Web サービスに基づくDEMS サーバを構築し、多数の機器がサーバに対して定期的にデータの送受信を行うような実験を行い、ネットワークトラヒック量及びサーバ負荷の測定を行った。その結果、WebSocket を用いることで、HTTP を用いる場合に比べてネットワークトラヒック量を20%削減できること、また、データの送信に対する応答遅延時間が38%改善されることがわかった。

[関連発表]

  1. 田中博貴, ``データセンター機器制御のためのIEEE 1888へのWebSocketプロトコルの適用,'' 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, Feb. 2015.

2.3. トランスポート層アーキテクチャに関する研究

2.3.1. オーバレイルーティングによって増加する ISP 間トランジットコストの削減に関する研究

オーバレイルーティングによって増加する ISP 間トランジットコストの削減に関する研究

近年提案されているContent-Centric Networking (CCN)は、コンテンツのキャッシュをルータに保持するため、宛先ホストまでの経路上において、トラヒックの削減に効果がある。このトラヒック削減は、ISP にとってはトランジットリンクを通過するトラヒックの削減に繋がるため、トランジットコストを削減できる。一方で、CCN ルータがキャッシュのために搭載できるメモリ容量はエンドユーザが要求するコンテンツの量に対して十分とはいえない。また、通常の CCN では経路上のキャッシュのみが利用され、経路外にキャッシュが存在しても利用できない。

そこで本稿では、ISP のトランジットコスト削減を目的とした、複数ISP 間におけるCCN ルータのキャッシュ共有手法を提案する。提案手法では、CCN ルータ間で互いにキャッシュを利用し、お互いにキャッシュするコンテンツの重複を排除する。これにより限られたメモリ容量を有効利用してキャッシュヒット率を高め、トランジットコストを大きく削減する。実際の商用ISP のネットワークトポロジを利用したシミュレーション評価により、提案手法が通常のCCN と比べ、トランジットトラヒック量を最大で28%削減できることを示した。

[関連発表]

  1. Kazuhito Matsuda, Go Hasegawa and Masayuki Murata, ``Multi-ISP cooperative cache sharing for saving inter-ISP transit cost in content centric networking,'' to appear in IEICE Transactions on Communications, 2015.

2.3.2. オーバレイネットワークにおけるネットワーク性能計測手法に関する研究

オーバレイネットワークにおけるネットワーク性能計測手法に関する研究

オーバレイネットワークはIP ネットワーク上に論理的に構築されたネットワークであるため、性能の維持、向上のためには定期的にオーバレイパスの資源情報を計測によって得る必要がある。オーバレイネットワークの構築に必要な情報を得る手法は数多く提案されているが、その多くは小規模なオーバレイネットワークを対象としており、全てのオーバレイノード間の経路を計測する手法である。このような手法ではオーバレイノード数の2乗の計測コストが必要であり、オーバレイノード数が増加した場合には計測に必要なコストの増加が問題となる。

このようなオーバレイネットワークにおける計測においては、計測経路数を削減する、あるいは、スーパーノードを設置してオーバレイネットワークの全ての経路情報を収集し、完全スケジューリングによって計測の衝突を回避する手法が提案されている。これに対し本研究では、スーパーノードを使用せず、かつ、IP ネットワークの完全なトポロジ情報を必要としない、オーバレイネットワーク計測手法を提案した。具体的には、個々のオーバレイノードが自身を始点とするオーバレイパスの計測タイミングを決定し、計測衝突を回避する。

提案手法は、個々のオーバレイノードが他のオーバレイノードまでのアンダーレイ経路情報を取得し、他のオーバレイノードと経路情報を交換することにより、自身を始点とする経路と、他のオーバレイノードを始点とするパスの経路重複の状態を推定する。1 つのオーバレイノードを始点とする複数のパスは、逐次的に計測を行うことで、計測衝突を回避する。一方、始点が異なる経路は、始点オーバレイノードがランダムに計測タイミングを決定することで、衝突を確率的に回避する。性能評価の結果、従来の完全スケジューリング型の計測手法に比べて高い計測頻度を達成し、かつ、計測重複を効率的に回避できることを明らかにした。また、利用可能帯域の計測精度を下げることなく、計測オーバヘッドを削減できること、また、アンダーレイネットワークの故障を従来手法に比べて短い時間で検出できることを明らかにした。

さらに本研究では、オーバレイパスの重複した部分の計測を行わず、重複部分の計測結果を合成することにより、オーバレイネットワーク全体の性能を推定する、計測結果の空間的合成手法を提案した。この手法は、オーバレイネットワーク全体のパスの情報を得る完全性を維持しつつ、パスの計測数を削減することができるが、計測結果の空間的合成によって得られた推定結果と実際の計測結果との間の誤差、つまり推定精度が問題となる。そのため、本研究では、PlanetLab上における計測結果を用いた、パケット廃棄率の計測結果の空間的合成手法の精度評価を行った。また、推定精度を向上させるための計測結果のデータ処理手法を提案した。

精度評価の結果、PlanetLab環境における、実際のパケット廃棄率の計測結果と、空間的合成手法によって得られた推定値との平均対数誤差は約0.4であることがわかった。また、パケット廃棄率の計測においては、オーバレイノード処理負荷が原因となり、計測開始後の数秒間にパケットが全く届かないことがあり、そのような計測結果を削除した上で統合手法を適用することによって、推定精度が向上することがわかった。さらに、パケット廃棄率の計測結果に対し、統計的検定を適用し、外れ値を除去することにより、平均対数誤差を最大で36%改善できることを示した。

[関連発表]

  1. Dinh Tien Hoang, Go Hasegawa and Masayuki Murata, ``A distributed mechanism for probing overlay path bandwidth using local information exchange,'' IEICE Transactions on Communications, vol. E97-B, no. 5, pp. 981-995, May 2014. [paper]
  2. Go Hasegawa, Yusuke Iijima and Masayuki Murata, ``Accuracy improvement for spatial compotision-based end-to-end network measurement,'' to be presented at 12th The International Conference on In-formation Technology (ITNG 2015), Apr. 2015.

2.3.3. ネットワークパスの複数区間の利用可能帯域の同時計測に関する研究

ネットワークパスの複数区間の利用可能帯域の同時計測に関する研究

エンド端末間におけるデータ転送の際に、パスの利用可能帯域を指標として用いることで、輻輳の検知、通信レートの制御、オーバレイネットワークにおけるトポロジ制御、経路制御やマルチパス転送などの様々なネットワーク制御が可能となる。そのため、エンド端末間パスの利用可能帯域を計測することは重要である。従来の端末間パスの利用可能帯域の計測技術は、ボトルネック区間の利用可能帯域の値のみを把握することができるが、一方、ボトルネック区間そのものの特定やエンド端末間パスの複数箇所の利用可能帯域の計測を行うことはできない。しかし、たとえば無線ネットワークと有線ネットワークなどネットワーク特性が異なる区間がエンド端末間パス上に混在している場合に、それぞれのネットワークの利用可能帯域の計測が可能となれば、無線ネットワークなどパケット誤りの多い環境に応じて通信レートを低く設定するなどの、ネットワーク環境に応じた制御を行うことができる。

そこで本研究では、エンド端末間のパス上における複数かつ任意の区間における利用可能帯域を同時に計測する手法について検討し、その有効性をシミュレーション及び実機実験によって検証した。従来の利用可能帯域の計測手法は送信端末が受信端末に向けて計測用パケットを送る際に、パケットの送信間隔を様々に変化させ、受信端末における受信間隔を観察することで利用可能帯域を計測する。そこで、提案手法においては、パケットの送信間隔の制御方法を改善し、かつ、エンド端末間パス上のルータにおいて記録されるパケットの送受信時刻を利用することによって、端末間のパス上における任意の区間の利用可能帯域を計測する。提案方式の性能評価は、簡易的なシミュレーションによって行った。その結果、送信端末に近いネットワーク区間より、受信端末に近いネットワーク区間の利用可能帯域が大きい場合においても、それぞれの区間の利用可能帯域を計測することが可能であることを確認した。また、実機実験によっても、シミュレーション結果と同等の計測精度が得られることを確認した。

[関連発表]

  1. Kazumasa Koitani, Go Hasegawa, and Masayuki Murata, ``End-to-end measurement of hop-by-hop available bandwidth,'' in Proceedings of The 28th IEEE International Conference on Advanced Infor-mation Networking and Applications IEEE AINA 2014, May 2014. [paper]

2.3.4. マルチテナント型データセンタにおける仮想ネットワーク配置に関する研究

マルチテナント型データセンタにおける仮想ネットワーク配置に関する研究

マルチテナント型データセンタでは、基盤となる物理ネットワークが備える性能を余すことなくテナントに配分し、かつ、物理ネットワークの障害がテナントに与える影響を抑えるため、テナントを構成する仮想ネットワークを物理ネットワーク上に適切に配置することが必要になる。本報告では、仮想ネットワークの性能と可用性の向上を目的に、まず、仮想ネットワークが得る利用可能帯域と障害により失う帯域の差分を有効帯域と定義し、仮想ネットワークの配置問題を定式化する。次に、障害復旧手続きを規定した上で、仮想ネットワークの集約状態に応じて、物理ネットワークの障害時における仮想ネットワークの障害復旧時間が変化するモデルを提案する。最後に、計算機シミュレーションを行い、有効帯域を最大化する仮想ネットワークの配置は、物理ネットワークの帯域を使い切り、かつ、障害による停止時間を、利用可能帯域を最大化する配置に比べ1/3 程度に低減できることを示した。

[関連発表]

  1. Yukio Ogawa, Go Hasegawa, and Masayuki Murata, ``Virtual network allocation for fault tolerance with bandwidth efficiency in a multi-tenant data center,'' in Proceedings of IEEE Cloudcom 2014, Dec. 2014. [paper]

2.3.5. Webトラヒック制御に関する研究

Webトラヒック制御に関する研究

クライアントPC からのリクエスト受信時に、サーブレットやJava Server Pages (JSP)のプログラムをサーバ側で実行するか、JavaScript で書かれたAjax やDOM によるプログラムをHTML に埋め込みクライアントPC 側で実行することで生成される動的オブジェクトの割合が増加している。その結果、Webサイト閲覧時に発生する通信パタンが複雑化している。一方で、67%のユーザは毎週のようにWeb 閲覧時の待ち時間の長さを感じており、17%のユーザはWeb 閲覧時に最大でも5 秒しか待てないという報告がなされており、複雑性を増すWeb トラヒックをいかにして効率的に配信するかが重要な課題となっている。

そこで、過去の研究において、測定用PC から多数のサイトにアクセスした際に発生するトラヒックの通信特性値をHAR(HTTPArchive) ファイルとして取得し、HAR ファイルから各種特性値を抽出することで、URL カテゴリやオブジェクト種別ごとの各種通信特性の傾向について分析したが、単一地点(東京) からの測定分析に限定されており、通信構造の地理的な傾向の差異は分析されていない

そこで本研究では、PlanetLab を用いて世界の12 の拠点から、アクセス頻度の高い約1,000 のWeb サイトにアクセスしたときに発生する通信パタンを測定し、サーバ距離、遅延時間、オブジェクト数といった各種特性値の地域的な傾向について分析した。その結果、Business, Regional, Shopping, Sportsなどの地域性の高いオブジェクトは各々のアクセス地点の近隣に存在するサーバから取得される傾向があり、一方、Reference, Health, Adult, Gamesなどの地域性の低いサイトのオブジェクトは北米に存在するサーバから取得される傾向があることが明らかとなった。また各Web サイトを各測定地点における各特性値の傾向に基づきクラスタ分析し、オブジェクト種別やURLカテゴリによる通信特性の違いを明らかにし、効率的なキャッシュ制御法として、地域性の低いサイトのオブジェクトを様々な地域で優先的にキャッシュすることで、限られたキャッシュ資源を有効に活用した効果的なWebレスポンス時間の改善が期待できることを示した。

[関連発表]

  1. 上山 憲昭, 中野 雄介, 塩本 公平, 長谷川 剛, 村田 正幸, 宮原 秀夫, ``Web トラヒックの地域的な傾向分析,'' 電子情報通信学会技術研究報告(NS2014-20), vol. 114, pp. 107-112, Apr. 2014. [paper]

2.3.6. 化学反応式を用いた空間協調モデルに基づくサービス空間構築手法に関する研究

化学反応式を用いた空間協調モデルに基づくサービス空間構築手法に関する研究

Network Function Virtualization (NFV) やマッシュアップWebサービスなどのネットワークシステムにおいては、実行環境の構成要素である汎用サーバ上に複数のサービスや機能を配置し、実行する。その分散配置されたサーバに、どのサービスや機能を配置するか、及び配置された各サービスや機能にどう資源を割り当て実行するかを各サーバで自律的に決定することは、物理的に広い範囲のネットワーク環境や、サーバ障害や環境変動の発生時においても、システムの冗長性や成長性を保ちながらシステム全体を制御できる。また、遺伝子ネットワークや化学反応等の生化学における特性である自己組織性や堅牢性を情報ネットワークアーキテクチャへ応用する検討が活発に行われている。

そこで本研究では、化学反応式を利用した空間拡散モデルに基づいて、上記のようなネットワークサービスにおいて、提供するサービスや機能を適切な場所で実行し、サーバ資源をそれらで効率よく共有する手法を提案する。提案手法では、サービスや機能を実行するサーバを個々のタプル空間とみなし、ユーザからのリクエスト量やサービスの需要量等を化学物質として考え、サーバ内の局所的な状況を化学物質の濃度変化や拡散によって表現する。そして、その空間で、各サービスに対するリクエストをサーバ資源を用いて処理する反応式を定義し、それを実行することにより、サービスの需要に応じたサーバ資源の共有をシステム内の各デバイスの自律的な動作によって実現する。シミュレーション評価により、提案システムが仮想化ネットワークシステムに求められる様々な機能を実現できることを確認した。

[関連発表]

  1. Shun Sakurai, ``Construction method of service space in virtualized network system based on chemical-inspired tuple space model,'' Master’s thesis, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, Feb. 2015.
  2. Shun Sakurai, Go Hasegawa, and Masayuki Murata, ``Construction method of service space in virtualized network system based on chemical-inspired spatial coordination model,'' 電子情報通信学会技術研究報告 (NS2014-188), vol. 114, pp. 69-74, Mar. 2015. [paper]

2.4. 無線・モバイルネットワークに関する研究

2.4.1. TCPの動作を考慮した無線LANの消費電力低減に関する研究

TCPの動作を考慮した無線LANの消費電力低減に関する研究

IEEE 802.11無線LANにおいては、無線通信が消費する電力が全体の10%から50%を占めることが報告されており、無線通信の消費電力を削減することが機器全体の消費電力を削減するうえで重要である。無線LANにおける省電力化に関する検討は、主にハードウェアレベルおよびMACプロトコルレベルの双方から行われている。一般に、ネットワーク機器の省電力に関して議論を行う場合においては、省電力効果とネットワーク性能間のトレードオフを考慮する必要がある。すなわち、消費電力の削減に効果のある要因を明らかにし、その要因がどの程度ネットワーク性能を低下させるかを知ることが重要である。しかし、TCPなどのトランスポート層プロトコルの挙動が省電力性能に与える影響を考慮したデータ転送手法に関する研究はほとんど行われていない。

そこで本研究では、無線LAN 環境におけるTCPデータ転送の省電力化を行うためにSCTPトンネリングを提案した。SCTPトンネリングは、複数のTCPフローを無線端末とアクセスポイント間に確立した1本のSCTPアソシエーションに集約する。そして、SCTPトンネリングは集約されたTCPフローのパケットをバースト的に転送することによって状態遷移回数を削減し、スリープによる省電力効果を高める。また、提案方式の省電力効果を評価するために、SCTPトンネリングの消費電力モデルを構築する。その消費電力モデルに基づいた消費電力解析により、提案方式が消費電力を最大70%程度削減できることを示した。また、実機実験によってもその有効性を検証し、標準化されている省電力手法を単独で用いた場合と同程度の省電力効果を保ちながら、ファイル転送時間を短く抑えることができることを示した。

[関連発表]

  1. Masafumi Hashimoto, Go Hasegawa and Masayuki Murata, ``An analysis of energy consumption for TCP data transfer with burst transmission over a wireless LAN,'' International Journal of Communication Systems (online), July 2014. [paper]

2.4.2. M2M通信収容のためのモバイルコアネットワークアーキテクチャに関する研究

M2M通信収容のためのモバイルコアネットワークアーキテクチャに関する研究

携帯電話加入者数の増加や高機能なスマートフォン等の普及により、3G やLTE などのモバイルネットワークにおいて、ユーザプレーンとコントロールプレーンの双方において発生する輻輳への対応が課題となっている。特にコントロールプレーンの輻輳については、新たな需要拡大を伴う通信形態であるMachine-to-Machine (M2M) 通信による影響が大きいと指摘されている。M2M通信は、通信するデータ量そのものは多くはないが、端末数が膨大になるとされており、その通信特性は大きく異なる。そのため、M2M 通信を行う端末(以下ではM2M 端末と呼ぶ) を従来の携帯電話端末と同じ方式でモバイルネットワークに接続すると、特にコントロールプレーンの輻輳が悪化すると考えられる。スマートフォンのようなユーザ端末のトラヒックはユーザの端末操作に応じて発生し、遅延時間に対する要求条件も厳しいため、輻輳解消のための制御は不向きである。一方、M2M 端末が発生させる通信は一般的に機械に組み込まれることが多く、端末数が非常に多く、間欠的であり、遅延時間に対する制約はユーザ端末に比べると緩い。このような特性を持ったトラヒックに関して、制御の効果を生み出しやすいことが期待される。

そこで本研究では、モバイルコアネットワークの負荷を軽減するための通信集約手法に着目し、通信集約の際のパラメータを決定するために、通信集約がモバイルネットワークの負荷やM2M 通信の特性に与える影響を明らかにした。具体的には、端末側のシステムインテグレータで集約を行う場合やネットワークにおいて集約を行う場合等の集約箇所の違いや、集約の度合が性能に与える影響を数学的に解析し、集約によって軽減されるモバイルネットワークの処理負荷や、M2M 通信に新たに発生する遅延時間の特性を評価する。評価の結果、S-GWで集約を行うことで、集約による遅延時間の発生を抑えながら、M2M端末の収容効率を約30%改善できることを明らかにした。

さらに、モバイルコアネットワークのデータプレーンとコントロールプレーンを分離し、一方、あるいは双方をクラウド環境へ設置するネットワークアーキテクチャに着目し、その効果を数学的解析手法によって明らかにした。その結果、仮想化によって容易となるコアノードへの柔軟な資源割当により、M2M 端末の収容可能台数が約30%増加することを明らかにする。さらに、通信集約手法を組み合わせることで、その効果が最大で124%に拡大することを示した。

[関連発表]

  1. 長谷川 剛, 村田 正幸, ``モバイルコアネットワークにおける M2M 通信集約手法の解析的評価,'' 電子情報通信学会技術研究報告(MoNA2014-25), vol. 114, pp. 51-56, July 2014. [paper]
  2. 長谷川 剛, 村田 正幸, ``M2M 通信収容のための仮想モバイルコアネットワークアーキテクチャに関する一検討,'' 電子情報通信学会技術研究報告 (NS2014-261), vol. 114, pp. 493-498, Mar. 2015. [paper]

2.4.3. スマートフォンアプリケーションのパケット分類手法に関する研究

スマートフォンアプリケーションのパケット分類手法に関する研究

スマートフォンのアプリケーションの動作はアプリケーション開発者に委ねられているため、各アプリケーションが生成するトラヒックは、従来のフィーチャフォンの音声やキャリアが提供するi-mode 等のサービスが生成するトラヒックとは異なり、アプリケーションはサービスプロバイダのサーバとつながって様々なトラヒックを発生させ、事前に見積もるのは困難である。これら個々のトラヒックがネットワーク内で多重化された場合には、ランダムなトラヒックではなく、固有なトラヒックパターンを発生させ、場合によって急激なトラヒックの変動が発生する。また、アプリケーションとサーバとの通信が頻発すると、ネットワーク内の制御サーバとスマートフォンとの制御信号のやりとりが増大し、制御サーバに過大な負荷を与える。この様なスマートフォンアプリケーションによるネットワークへのインパクトを、アプリケーションが普及する前に算出できれば、アプリケーション普及前に対策を講じることが可能となる。

そこで本研究では、スマートフォン上の多様なアプリケーションと通信パターンについての調査を行うため、多くのスマートフォンを収容するネットワークでのキャプチャ結果をアプリケーションごとのパケットに分類する手法の検討を行った。検討した手法は、まず、スマートフォンアプリケーションのプログラムを解析し、通信するサーバのホスト名に対応する文字列を抽出する。一方、スマートフォンを収容するネットワークにおいて、スマートフォンのパケットをキャプチャし、スマートフォン毎にキャプチャデータを分類する。これには、スマートフォン毎のIP アドレスを用いる。その後、予め生成しておいたアプリケーションごとの宛先ホスト名に一致するパケットを抽出することで、アプリケーションごとのパケットに分類する。複数の実アプリケーションを用いて検証を行った結果、多くのアプリケーションについて高い適合率と再現率が得られることがわかった。

[関連発表]

  1. 中野 雄介, 上山 憲昭, 塩本 公平, 長谷川 剛, 村田 正幸, 宮原 秀夫, “混在するスマートフォンアプリケーションのパケット分類手法,” 電子情報通信学会ネットワークソフトウェア研究会, Jan. 2015.

2.4.4. TDMA型マルチホップ無線ネットワークにおけるトポロジがネットワーク性能に与える影響の研究

TDMA型マルチホップ無線ネットワークにおけるトポロジがネットワーク性能に与える影響の研究

TDMA型マルチホップ無線ネットワークでは、クライアント端末のトラヒック要求量とネットワークトポロジから決定されるトラヒック負荷に応じて、リンクにタイムスロットを割り当てる必要がある。そのため、ネットワークトポロジ及びクライアント端末の収容先の決定は、ネットワーク性能の改善のための重要な要因である。

本研究では、クライアント端末の収容先を含むネットワークトポロジがTDMA型マルチホップ無線ネットワークの性能に与える影響に関する評価結果を示す。また、ネットワークトポロジ構築の問題を組み合わせ最適化問題として定義し、その問題を発見的手法を用いて解くことで、パケット伝送遅延時間やネットワークキャパシティの観点で優れたネットワークトポロジを得る手法を提案する。 評価結果より、提案手法を用いることで単純なネットワークトポロジと比べてパケット伝送遅延時間を平均20%削減し、ネットワークキャパシティを最大で43%拡大できることを明らかにした。

[関連資料]

  1. TDMA型マルチホップ無線ネットワークにおけるトポロジがネットワーク性能に与える影響の研究 TDMA型マルチホップ無線ネットワークにおけるトポロジがネットワーク性能に与える影響の研究 (901 KB)

[関連発表]

  1. Kai Koyama, ``An Analysis Study on the Impact of Network Topology on the Performance of TDMA-based Multihop Wireless Networks,'' Master's Thesis, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, Feb. 2015.
  2. 小山甲射, 長谷川剛, 松岡茂登, ``TDMA型マルチホップ無線ネットワークにおけるトポロジがネットワーク性能に与える影響の解析,'' 電子情報通信学会技術研究報告(NS2014-274), vol.114, no.477, pp.571-576, Mar. 2015. [paper]

3.発表論文一覧

3.1学術論文誌掲載論文

  1. Dinh Tien Hoang, Go Hasegawa and Masayuki Murata, ``A distributed mechanism for probing overlay path bandwidth using local information exchange,'' IEICE Transactions on Communications, vol. E97-B, no. 5, pp. 981-995, May 2014. [paper]
  2. Go Hasegawa, Shoichi Takagi, Yoshiaki Taniguchi, Hirotaka Nakano and Morito Matsuoka, ``Design and evaluation of time slot assignment algorithm for IEEE 802.16j relay networks,'' International Journal of Computer Networks, vol.6, no.3, pp.50-65, June 2014. [paper]
  3. Shuto Fujii, Yoshiaki Taniguchi, Go Hasegawa and Morto Matsuoka, ``Pedestrian counting with grid-based binary sensors based on Monte Carlo method,'' SpringerPlus, vol.3, article ID 299, 10 pages, June 2014. [paper]
  4. Masafumi Hashimoto, Go Hasegawa and Masayuki Murata, ``An analysis of energy consumption for TCP data transfer with burst transmission over a wireless LAN,'' International Journal of Communication Systems (online), July 2014. [paper]
  5. Xun Shao, Go Hasegawa, Yoshiaki Taniguchi and Hirotaka Nakano, ``An interdomain overlay network based on ISP alliances for economically efficient interdomain traffic routing,'' IEICE Transactions on Information and Systems, vol.E97-D, no.12, pp.3163-3170, Dec. 2014. [paper]
  6. Kazuhito Matsuda, Go Hasegawa, and Masayuki Murata, ``Multi-ISP cooperative cache sharing for saving inter-ISP transit cost in content centric networking'', IEICE Transactions on Communications, 2015. (to apperar)

3.2解説論文・記事等

  1. 松岡茂登, ``エネルギーセントリック データセンター ,'' OHM, pp.43-45, Apr. 2014.
  2. 松岡茂登, ``ユビキタス社会を支えるデータセンタの省エネ化 エネルギーセントリックデータセンター,'' 電気評論, June 2014.

3.3国際会議発表

  1. Kazumasa Koitani, Go Hasegawa, and Masayuki Murata, ``End-to-end measurement of hop-by-hop available bandwidth,'' in Proceedings of The 28th IEEE International Conference on Advanced Infor-mation Networking and Applications IEEE AINA 2014, May 2014. [paper]
  2. Masafumi Hashimoto, Go Hasegawa and Masayuki Murata, ``Experimental evaluation of SCTP tunneling for energy-efficient TCP data transfer over a WLAN,'' in Proceedings of the 10th International Wireless Communications & Mobile Computing Conference (IWCMC 2014), Aug. 2014. [paper]
  3. Takaaki Deguchi, Yoshiaki Taniguchi, Go Hasegawa, Yutaka Nakamura, Norimichi Ukita, Kazuhiro Matsuda and Morito Matsuoka, ``Impact of workload assignment on power consumption in software-defined data center infrastructure,'' in Proceedings of the 3rd IEEE International Conference on Cloud Networking (IEEE CloudNet 2014), Oct. 2014. [paper]
  4. Yukio Ogawa, Go Hasegawa, and Masayuki Murata, ``Virtual network allocation for fault tolerance with bandwidth efficiency in a multi-tenant data center,'' in Proceedings of IEEE Cloudcom 2014, Dec. 2014. [paper]

3.4口頭発表(国内研究会など)

  1. 上山 憲昭, 中野 雄介, 塩本 公平, 長谷川 剛, 村田 正幸, 宮原 秀夫, ``Web トラヒックの地域的な傾向分析,'' 電子情報通信学会技術研究報告(NS2014-20), vol. 114, pp. 107-112, Apr. 2014. [paper]
  2. 松岡茂登, ``エネルギーセントリックデータセンター,'' 第6回データセンター構築運用展, May 2014.
  3. 松岡茂登, ``「温度制御」から「エネルギー制御」へのパラダイムシフト Energy Centric Software Defined Data Center,'' データセンターコンファレンス 2014 Summer, June 2014. (基調対談)
  4. 松岡茂登, ``ユビキタス社会を支えるネットワークの向こう側,'' センサネットワーク研究会第67回研究会, June 2014.
  5. 長谷川 剛, 村田 正幸, ``モバイルコアネットワークにおける M2M 通信集約手法の解析的評価,'' 電子情報通信学会技術研究報告(MoNA2014-25), vol. 114, pp. 51-56, July 2014. [paper]
  6. 通阪航, 長谷川剛, 村田正幸, ``IEEE 802.11 無線マルチホップネットワークにおける消費電力量最小化のためのデータレート選択に関する一検討,'' インターネット技術第163委員会新世代ネットワーク構築のための基盤技術研究分科会ワークショップ (ITRC-NWGN 2014), Aug. 2014.
  7. 小山甲射, 長谷川剛, 松岡茂登, ``IEEE 802.16jにおけるネットワークトポロジ構築および端末収容方法の提案,'' インターネット技術第163委員会新世代ネットワーク構築のための基盤技術研究分科会ワークショップ (ITRC-NWGN 2014), Aug. 2014. (ポスター講演)
  8. 橋本和幸, 松岡茂登, 長谷川剛, 谷口義明, ``データセンタにおける電力削減のための機械学習による温度予測,'' インターネット技術第163委員会新世代ネットワーク構築のための基盤技術研究分科会ワークショップ (ITRC-NWGN 2014), Aug. 2014. (ポスター講演)
  9. 桜井駿, 長谷川剛, 村田正幸, ``化学反応式モデルに基づく情報ネットワークシステムのリソース配置手法に関する一検討,'' インターネット技術第163委員会新世代ネットワーク構築のための基盤技術研究分科会ワークショップ (ITRC-NWGN 2014), Aug. 2014. (ポスター講演)
  10. 出口孝明, 相澤直樹, 柴田克彦, 池田昌弘, 松岡茂登, ``抜本的低炭素化に向けたデータセンター用空調システムの開発,'' 平成26年度空気調和・衛生工学会大会論文集, pp.53-56, Sep. 2014.
  11. 長谷川剛, ``将来移動ネットワークの制御技術,'' 将来ネットワーク科学リサーチシンポジウム, Sep. 2014.
  12. 長谷川剛, ``都市型スマートICT実現のためのエネルギー管理システムの確立に向けて,'' センサネットワーク研究会第70回研究会, Sep. 2014.
  13. 松岡茂登, ``フォトニックネットワークとグリーンICT (データセンタの消費電力の観点から),'' 電子情報通信学会ソサイエティ大会, Sep. 2014. (チュートリアル)
  14. 中野雄介, 上山憲昭, 塩本公平, 長谷川剛, 村田正幸, 宮原 秀夫, ``混在するスマートフォンアプリケーションの パケット分類手法,'' 電子情報通信学会ネットワークソフトウェア研究会, Jan. 2015.
  15. 川口秀樹, 上羽正純, 松岡茂登, ``サーバラック電磁シールドメッシュによるミリ波通信における反射・信号ひずみのFDTD法解析,'' 電子情報電子情報通信学会技術研究報告(AP2014-164), vol.114, no.396, pp.19-23, Jan. 2015.
  16. 川口秀樹, 上羽正純, 松岡茂登, ``データサーバラック内でのサーバ間ミリ波通信における反射・干渉伝搬特性のFDTD法解析,'' 電子情報通信学会電磁界理論研究会, EMT-15-018, Jan. 2015.
  17. Shun Sakurai, Go Hasegawa, and Masayuki Murata, ``Construction method of service space in virtualized network system based on chemical-inspired spatial coordination model,'' 電子情報通信学会技術研究報告 (NS2014-188), vol. 114, pp. 69-74, Mar. 2015. [paper]
  18. 田代晋也, 樽谷優弥, 長谷川剛, 中村泰, 松田和浩, 松岡茂登, ``データセンタの温度分布予測のためのネットワークモデル,'' 電子情報通信学会技術研究報告(NS2014-190), vol.114, no.477, pp.81-86, Mar. 2015. [paper]
  19. 橋本和幸, 樽谷優弥, 長谷川剛, 松田和浩, 田村卓三, 中村泰, 松岡茂登, ``データセンタの電力削減のための機械学習法を利用した温度分布予測,'' 電子情報通信学会技術研究報告(NS2014-191), vol.114, no.477, pp.87-92, Mar. 2015. [paper]
  20. 出口孝明, 樽谷優弥, 長谷川剛, 中村泰, 田村卓三, 松田和浩, 松岡茂登, ``データセンタにおける空調機の消費電力を削減するための遺伝アルゴリズムに基づくタスク配置手法の性能評価,'' 電子情報通信学会技術研究報告(NS2014-203), vol.114, no.477, pp.149-153, Mar. 2015. [paper]
  21. 菅沼孝二, 樽谷優弥, 長谷川剛, 中村泰, 浮田宗伯, 松田和浩, 松岡茂登, ``データセンタの省電力化に向けたガウス過程動的モデルによる温度分布予測,'' 電子情報通信学会技術研究報告(NS2014-204), vol.114, no.477, pp.155-160, Mar. 2015. [paper]
  22. エムヘーテムーレン, 樽谷優弥, 長谷川剛, 松田和浩, 村田修一郎, 松岡茂登, ``WebSocketを用いたクラウド型HEMSのスケーラビリティの実験評価,'' 電子情報通信学会技術研究報告(NS2014-206), vol.114, no.477, pp.167-172, Mar. 2015. [paper]
  23. 北川貴大, 樽谷優弥, 長谷川剛, 松田和浩, 村田修一郎, 松岡茂登, ``CEMS における多数端末の同時接続に対する MQTT プロトコルの拡張性の実験評価,'' 電子情報通信学会技術研究報告(NS2014-218), vol.114, no.477, pp.239-244, Mar. 2015. [paper]
  24. 北田和将, 樽谷優弥, 長谷川剛, 松田和浩, 松岡茂登, ``数値流体力学シミュレーションによるデータセンタ内の温度予測のためのサーバモデルの作成,'' 電子情報通信学会技術研究報告(NS2014-243), vol.114, no.477, pp.385-390, Mar. 2015. [paper]
  25. 長谷川 剛, 村田 正幸, ``M2M 通信収容のための仮想モバイルコアネットワークアーキテクチャに関する一検討,'' 電子情報通信学会技術研究報告 (NS2014-261), vol. 114, pp. 493-498, Mar. 2015. [paper]
  26. 小山甲射, 長谷川剛, 松岡茂登, ``TDMA型マルチホップ無線ネットワークにおけるトポロジがネットワーク性能に与える影響の解析,'' 電子情報通信学会技術研究報告(NS2014-274), vol.114, no.477, pp.571-576, Mar. 2015. [paper]
  27. 川口秀樹, 上羽正純, 松岡 茂登, ``データセンターにおけるミリ波無線通信化のためのサーバラック背面ドア電磁シールドメッシュの仕様検討'' 電子情報通信学会総合大会, Mar. 2015.

3.5. 博士論文・修士論文・特別研究報告

3.5.1. 博士論文

該当なし

3.5.2. 修士論文

  1. Shun Sakurai, ``Construction method of service space in virtualized network system based on chemical-inspired tuple space model,'' Master's Thesis, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, Feb. 2015.
  2. Kai Koyama, ``An Analysis Study on the Impact of Network Topology on the Performance of TDMA-based Multihop Wireless Networks,'' Master's Thesis, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, Feb. 2015.
  3. Kazuyuki Hashimoto, ``Temperature prediction for energy optimization in data centers by machine learning approaches,'' Master's Thesis, Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University, Feb. 2015.

3.5.3. 特別研究報告

  1. 北川貴大, ``CEMSにおける多数端末の同時接続に対するMQTTプロトコルの拡張性の実験評価,'' 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, Feb. 2015.
  2. 田代晋也, ``データセンタの温度分布予測のためのネットワークモデルの提案,'' 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, Feb. 2015.
  3. 田中博貴, ``データセンター機器制御のためのIEEE 1888へのWebSocketプロトコルの適用,'' 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, Feb. 2015.
  4. 寺山恭平, ``データセンタのエネルギー制御のためのサーバ消費電力モデルの構築,'' 大阪大学基礎工学部情報科学科特別研究報告, Feb. 2015.